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RBI/RBM Q&A

RBI/RBM をより理解するための Q&A です。【木原重光・富士彰夫:RBI/RBM入門、JIPMソリューション(2002)より】



Q01
RBI/RBM は何のために行うのですか?
また、RBI/RBM を実施するメリットは何ですか

Q02
メリットを事前に提示できますか?

Q03
本当に効果(費用に見合う効果)があるのですか?
1つのプラントで実施するとき、どれくらいの費用がかかるのですか?

Q04
RBI/RBM を実施するうえで、留意すべきことは何ですか?

Q05
API の RBI/RBM とASME の RBI/RBM の違いは何ですか? また、他には、どんな RBI/RBM があるのですか?
今後どのような方向に進むと考えられますか?

Q06
海外(とくに米国)が先行していて、日本は後追いのような気がします。日本では独自の RBI/RBM ができているのですか? その場合、誰(どこ)がどのようにして策定しているのですか?

Q07
RBI/RBM の課題や問題は何ですか?

Q08
RBI/RBM の考え方は、すべての設備に展開できますか?

Q09
RBI/RBM の適用に向いている設備とそうでない設備の見分け方はありますか? 実施すべき設備、すべきでない設備は、明確に外部から評価できますか?

Q10
対象プラントの管理技術の巧拙によって、RBI/RBM の結果はどのように異なってきますか?

Q11 国内で RBI/RBM がこれから盛んになりますか?
また、その理由も教えてください。

Q12 被害の大きさは、石油化学プラントや火力発電設備などプラントの規模や目的によって異なると思います。実際に評価する際、どのようなことが必要ですか?

Q13 化学プロセスの安全性を評価する方法として、HAZOP があるようですが、
HAZOPとは何ですか?

Q14 保全方法として RCM(Reliability Centered Maintenance)がありますが、
RBI/RBM とはどう違うのですか?

Q15 誤作動やヒューマンエラーなども損傷・不具合の原因になると思いますが、
RBI/RBM の中ではどのように評価しますか?

Q01:
RBI/RBM は何のために行うのですか?
また、RBI/RBM を実施するメリットは何ですか

A01:
プラント、設備、機器の稼働率向上とメンテナンス費用の低減が RBI/RBM を実施するメリットといえます。RBI/RBM はプラント、設備、機器全体でリスクが許容範囲に入るようにする方法です。すなわち、
(1) 高リスク部位では、そのリスクを低減することによって稼働率を向上させる、(2) 低リスク部位では、検査の省略などによってメンテナンスコストを低減させる---ことを可能にするものです。
また、RBI/RBM 手法はコンピュータ活用などのシステム化(ソフト化)を促進します。これによって、各種のメンテナンスデータの管理および技術伝承が容易になり、最終的に熟練技術者を減らすことが可能になります。すなわち、長期的にはメンテナンス要員の削減による、大幅コストダウンが可能になると考えられます。
Q02:
メリットを事前に提示できますか?

A02:
RBI/RBM のメリットはいろいろありますが、事前に提示するにはどこに注目して行うか、その目的を明確にする必要があります。たとえば、過剰な検査項目を減らしたり、検査・交換のインターバルを延長することによるコストダウン、すべての部位のリスクを評価して計画外停止の減少や、結果としての安全性向上など明確な目標を持つことにより、その実現のための評価が可能になります。
Q03:
本当に効果(費用に見合う効果)があるのですか?
1つのプラントで実施するとき、どれくらいの費用がかかるのですか?

A03:
RBI/RBM の作業はほとんどが人件費になります。たとえば、事業用火力発電ボイラにおける診断部位は600〜800点ほどあります。そのデータベースを作成するだけで、当初は相当の手間がかかります。また、設計データや検査・補修の記録の調査、運転履歴データの収集なども必要になります。したがって、どのように RBI/RBM を進めるかの手順の決定や、必要なデータがそろっているかどうかなどの状況によって費用は異なります。
当初の費用はかかりますが、前述のメリットによる効果があること、また一度つくれば次回は非常に簡単になること、そしてアウトソーシングを進めてメンテナンス人員が減ること、などから長期的なコスト効果は非常に大きくなると考えられます。現在の費用はプラントの規模によってまちまちですが、上記の作業を行うと数ヶ月程度の人件費を考える必要があるでしょう。
Q04:
RBI/RBM を実施するうえで、留意すべきことは何ですか?

A04:
専門家やユーザーが納得する手法を用いることです。RBI/RBM は、従来は専門家が判断してきた事柄を、共通の基準によって行うものであり、特定の人が行うと偏った評価になる恐れがあります。したがって、関係者の合意のもとで評価を進めていく必要があります。また、定性的な評価を行うとはいえ、過去の運転履歴や損傷事例など可能な限り多くのデータを収集することが評価の精度を向上させる手段といえます。
Q05:
API の RBI/RBM とASME の RBI/RBM の違いは何ですか? また、他には、どんな RBI/RBM があるのですか?
今後どのような方向に進むと考えられますか?

A05:
API(米国石油学会)と ASME(米国機会学会)の違いは、両学会が発行している API 581、 ASME CRTD-Vol.20-1 などに代表されるガイドラインの違いです。「リスク=破損の起こりやすさ×被害の大きさ」の定義はすべてに共通です。その実施方法については、API 581では、具体的にリスク査定ができるような方法を紹介しています。これに対して、ASME CRTD-Vol.20-1ではリスクの定量的計算の指針を述べているという違いがあります。しかし、最近は両学会が共同で基準作りの作業を始めており、共通化されるものと思われます。
また、英国 AEA 社の火力発電ボイラー用ソフト(RBMS)は、リスクの定義などの考え方が API、ASME ガイドラインと同じですが、実用的で使いやすいリスク算定方法を独自に考案しています。今後の方向としては、学会などで RBI/RBM の認知が進み、ガイドラインに沿った各種プラント、設備、機器用の RBI/RBM ソフトが開発されていくでしょう。それに伴い、適用が進み、そのメリットが広く認識されていくと予想しています。
Q06:
海外(とくに米国)が先行していて、日本は後追いのような気がします。日本では独自の RBI/RBM ができているのですか? その場合、誰(どこ)がどのようにして策定しているのですか?

A06:
欧米ではRBI/RBM手法を含んだメンテナンスに関する基準の整備が進んでいます。歴史的に見ると日本では、このような欧米で先行した規格、基準を翻訳して法律として取り込んできました。しかし、規制緩和が進んだ今日では、API、ASME など欧米の民間基準がそのまま国内の法律として取り込まれる可能性は少ないと思われます。
現段階では、とくに日本独自の手法が開発されているという話はまだ出ていません。リスクの定義は万国共通であり、日本独自のリスクの定義が出現することは考えらません。しかし、日本石油学会(JPI)、日本高圧力技術協会(HPI)、化学工学会装置材料委員会に RBI/RBM 研究会が設置され、API、ASME などの方法を勉強して国内での RBI/RBM 手法の学会基準を作ろうという動きがあます。また、RBI/RBM に関する海外ソフトを導入して、実際の設備のメンテナンスを行うことも、すでに始まっています。
Q07:
RBI/RBM の課題や問題は何ですか?

A07:
多種多様な設備に対し公平に評価するには、リスク評価について共通の基準が必要になりますが、国内ではいまだにその基準がありません。API 581 が共通の手順とはいえ、その方法を忠実に実施するためには、多くの費用と要員が必要になります。したがって、一企業で行うよりは、国内での標準的な方法を確立することが重要と思われます。また、RBI/RBM を実際に行う場合、データベースの作成などに相当の時間を要します。作業の簡略化や使いやすいツールやソフトの構築も必要になります。
Q08:
RBI/RBM の考え方は、すべての設備に展開できますか?

A08:
基本的には全ての設備に展開できると考えられています。しかし、たとえば回転機械のように経時的な劣化・損傷の情報を十分つかめず、突然損傷が現れるような機器ではむずかしいといわれています。なぜなら、回転機械では定期的に部品を交換する時間管理が主に採用されており、将来の劣化・損傷を精度良く推定することが困難だからです。したがって、現在では劣化・損傷の経験が豊富にある固定機器や圧力設備(圧力容器や配管)に限られています。
検査記録が少ない機器、たとえば長年開放しないような貯蔵設備では現在の損傷状態が把握できず、また経験も少ないため正確なリスクを決めることができないかも知れません。リスク評価では専門家の知識や経験が重要なので、そのような記録が十分ない機器、経験がない機器ではむずかしいと考えられます。
Q09:
RBI/RBM の適用に向いている設備とそうでない設備の見分け方はありますか? 実施すべき設備、すべきでない設備は、明確に外部から評価できますか?

A09:
Q8 の回答で理由を述べていますが、回転機械などには向いていないといわれています。しかし、リスクの考え方を用いると、どのような設備・機械装置にも適用できるはずです。RBI/RBM はその機器の損傷メカニズムに注目して行いますので、いかに過去の損傷事例や検査記録がそろっているかが、カギになります。開放点検をほとんどしない貯蔵設備などは、検査の記録がない、すなわちその部位がどのような損傷状態になっているか分からないため、RBI/RBM の適用はむずかしいでしょう。
しかし、現在では各種のシミュレーション技術を使うことにより、多くの現象を推定することが可能になっています。そのような方法を用いれば、今後はリスク評価を行うことができると思われます。
Q10:
対象プラントの管理技術の巧拙によって、RBI/RBM の結果はどのように異なってきますか?

A10:
プラントの管理には、運転、供用中検査、補修、記録、保全人材確保・育成などが含まれると思います。これらに関する技術の巧拙は、RBI/RBM 法のリスク評価に当然影響します。ある意味、対象プラントにおける管理技術の巧拙が、リスクを決めるすべてともいえます。運転技術の巧拙は寿命消費に影響し、検査技術の巧拙は破損の起こりやすさを決める最大の因子です。補修技術の巧拙は設備の健全性そのものであり、運転・検査などの記録の正確さは、余寿命推定の精度を決めるものです。人材は直接リスク評価項目に入らないと思いますが、すべての技術の源となるもので、専門家の蓄積した知識や経験を集約するRBI/RBM 法では、人材も RBI/RBM 法適用の巧拙を決めるものになるといえます。
Q11:
国内で RBI/RBM がこれから盛んになりますか?
また、その理由も教えてください。

A11:
メンテナンスに関連する社会情勢の変化とそれにともなうニーズの変化が進んでいます。このニーズに応えるものとして RBI/RBM に期待が集まっており、背景を要約すると以下のようになります。
1)設備の老朽化が進み、寿命延伸が求められている中で、競争の激化か
  ら、メンテナンスの効率化を強く求められるようになった。
2)規制緩和によって、各種プラントにおける定期検査が法定から自主検査
  に移行しつつあり、効率的な自主基準が必要となった。
3)リスクを基準にして、各部位に対するメンテナンスの重要度、緊急度を
  評価し、優先順位を付けてメンテナンスを行う方法は、これらのニーズ
  に合致する。
4)メンテナンスに関係する技術者の高齢化が進み、ベテラン技術者に代
  わってメンテナンス計画を作成するための基準およびシステム構築への
  ニーズが高まっており、定量的でシステム化(ソフト化)しやすい RBI/
  RBM 手法に期待が集まっている。
また、規制緩和、自由化が進んでいる欧米では、古くから自主基準としてRBI/RBM 手法が適用されてきたことも、日本で RBI/RBM の導入が進むであろうと予想する大きな理由でもあります。
Q12:
被害の大きさは、石油化学プラントや火力発電設備などプラントの規模や目的によって異なると思います。実際に評価する際、どのようなことが必要ですか?

A12:
石油化学プラントは、毒性や可燃性の液体を扱うのでプラント設備周辺への影響・周辺住民への影響なども考慮する必要があります。被害の大きさは、機器に孔があく場合の大きさや確率から、それがどのくらいの面積に及ぶかなどによって、異なってきます。
火力発電設備は人的被害よりは経済的被害の方が多いようです。その部位が破損したとき、破損の形態によって、応急補修費、周辺機器の補修費、足場などの工事費なども考慮します。とくにプラントが停止したときの操業損失を考えます。ただし、リスクとはあくまで相対的な指標ですので、詳細な費用の計算を行うのではなく、経験者が数百万円か数千万円か数億円かなど判断します。その際、判断基準を決めておくのも必要でしょう。
Q13:
化学プロセスの安全性を評価する方法として、HAZOP があるようですが、
HAZOPとは何ですか?

A13:
HAZOP(Hazard and Operability Study )は1960年代にイギリスで開発されたもので、プロセスプラントに内在する危険性と運転操作性の問題点を洗い出す手法です。近年、日本でも盛んになりつつあり、危険要因の洗い出し、運転上の問題点の洗い出しなどでリスク評価を行う点で、RBI/RBM と同様な手法を用います。
Q14:
保全方法として RCM(Reliability Centered Maintenance)がありますが、
RBI/RBM とはどう違うのですか?

A14:
RCM は保全方法の中で、損傷が想定される部位に最適なものは何かを決める手法として有効であり、石油化学プラントへの適用例も報告されています。RBI/RBM がリスクを評価するのに比べて、RCM は損傷が起きないようにするための保全方法を追求するという点で異なっていますが、両者の組み合わせでより最適なメンテナンス計画をつくることができると思われます。
Q15:
誤作動やヒューマンエラーなども損傷・不具合の原因になると思いますが、
RBI/RBM の中ではどのように評価しますか?

A15:
RBI/RBM では、ヒューマンエラーは直接考慮はしていません。基本的に機器が経年的に使用されるに伴って生じる劣化を扱います。検査やメンテナンスによるリスクを評価しているわけです。
運転におけるヒューマンエラーなどは、Q13 の回答で述べている HAZOP などで評価します。ただし、検査の技量や検査ミスは検査の効果の中で、誤操作による運転条件(温度や圧力)の変化は破損の起こりやすさの要因として扱います。


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